ゲーム音楽ではオーケストラや電子音だけでなく、三味線や尺八、和太鼓といった日本の伝統楽器が使われることがあります。その中でも美しく繊細な響きを持つ「琴(箏)」は、和風の世界観や幻想的な場面を表現するうえで魅力的な存在です。
ゲームの中では箏だけで演奏するのではなく、三味線や尺八、太鼓、さらにはオーケストラなどと組み合わせることで伝統音楽とはひと味違ったサウンドも生み出されています。
この記事では『原神』『仁王2』『大神』『朧村正』を取り上げ、ゲーム音楽と箏の関係や、和楽器が作品の世界観をどのように引き立てているのかを紹介します。
普段何気なく聴いているゲームBGMも使われている楽器に注目すると、これまでとは違った魅力が見えてくるかもしれません。
ゲーム音楽で琴(箏)が使われる魅力とは?

ゲーム音楽に琴(箏)を取り入れることで一般的なオーケストラや電子音とは異なる、日本らしい繊細な響きを表現できます。特に日本文化をモチーフとしたゲームでは映像だけでなく音楽からも「和」を感じさせる重要な要素となります。
ここでは箏という楽器の基本から、ゲーム音楽で活用される理由まで見ていきましょう。
琴(箏)とはどんな楽器?
箏は細長い木製の胴に弦を張り、「柱(じ)」と呼ばれる可動式の支柱を使って音程を調節する日本の伝統的な弦楽器です。一般的な箏には13本の弦があり、右手に箏爪を装着して弦を弾きます。
※日常では「琴」という表記も広く使われていますが本来の琴と箏は異なる楽器です。この記事では検索時の分かりやすさを考え、「琴(箏)」という表記を使用しています。
日本らしい世界観を表現しやすい
箏の大きな特徴は弦を弾いたときに生まれる澄んだ音色と美しい余韻です。城下町や神社、山里、桜や紅葉といった日本を連想させる風景ともよく調和します。
そのためゲームでは単なるBGMとしてだけでなく、日本文化を意識した場所であることをプレイヤーに伝えるための音楽的な演出としても活用できます。
静かな場面や幻想的なシーンと相性が良い
箏は一音一音の余韻を生かせるため、静かな場面にも適しています。夜の風景や神聖な場所、自然豊かなフィールドなどでは箏の繊細な響きによって落ち着きや神秘性を感じさせることができます。
ゲームでは映像と音楽が一体となって世界観を作ります。箏の音色が加わることでプレイヤーがその場所の雰囲気をより深く感じられるようになります。
戦闘曲にも活用できる
箏というと、ゆったりとした優雅な曲を思い浮かべる人も多いでしょう。しかしゲーム音楽では戦闘曲にも活用されています。
速いフレーズを演奏したり、三味線や和太鼓などの力強い楽器と組み合わせたりすることで、箏の繊細さを残しながらスピード感のある音楽を作れます。静かな楽器というイメージだけではない点もゲーム音楽で使われる箏の面白さです。
オーケストラとも組み合わせられる
現代のゲーム音楽では箏とオーケストラを組み合わせることもあります。ヴァイオリンやチェロなどの弦楽器、管楽器、打楽器に箏の音色を加えることで、壮大さと日本らしさを両立できます。
『原神』の稲妻の音楽は、その代表的な例の一つです。オーケストラに複数の和楽器を組み合わせることで伝統音楽をそのまま再現するのではない現代的な和風サウンドを生み出しています。
ほかの和楽器との組み合わせも魅力
箏は三味線や尺八、和太鼓などとも相性の良い楽器です。尺八なら静けさや哀愁、三味線なら鋭さや躍動感、和太鼓なら力強さを加えることができます。
同じ「和楽器」でも音色や役割は大きく異なります。ゲーム音楽ではそれぞれの特徴を組み合わせることで、場面に合わせた多彩な和風サウンドを作っています。
ゲームから箏を知るきっかけになる
普段は邦楽や箏曲を聴かない人でも、ゲームを通して箏の音色に触れる機会があります。「この音は何の楽器だろう?」と興味を持つことが伝統楽器そのものを知る入口になることもあるでしょう。
ゲーム音楽は伝統的な箏曲とは違った形で箏の魅力を伝えています。ゲームと伝統文化をつなぐ存在としても注目したいところです。
琴(箏)が使われたゲーム音楽①『原神』
『原神』は、広大な世界「テイワット」を冒険するオープンワールドRPGです。地域ごとに異なる文化や景観が設定されており、音楽にもそれぞれの地域をイメージした楽器が取り入れられています。
なかでも日本文化をモチーフとした「稲妻」では、箏・尺八・三味線・太鼓などの和楽器とオーケストラを融合させた音楽を楽しめます。
稲妻では箏を含む和楽器を使用
稲妻の音楽では、日本の伝統楽器が積極的に使われています。公式に公開された演奏では箏や尺八、三味線、太鼓と東京フィルハーモニー交響楽団が共演しています。
西洋のオーケストラだけでなく和楽器を加えることで、日本を思わせる地域性を音からも表現しています。映像と音楽の両面から稲妻独自の世界観を作り上げている点が特徴です。
箏を担当するのは渡邊香澄
稲妻の公式演奏で箏を担当しているのは、箏奏者の渡邊香澄さんです。公式クレジットでは、尺八の寄田真見乃さん、三味線の小山豊さん、駒田早代さん、太鼓芸能集団の鼓童などの参加も確認できます。
実際の箏奏者まで明らかになっているため、「箏のような音」ではなく、和楽器の演奏をゲーム音楽へ取り入れたことを確認できる作品です。
戦闘曲でも箏が活躍する
稲妻の戦闘曲「斬霧破竹:Duel in the Mist」の公式演奏でも箏が使用されています。箏だけでなく三味線、尺八、太鼓などが組み合わされ、緊張感のある和風サウンドを作り出しています。
箏が静かな場面だけでなく、激しいゲーム音楽にも対応できることが分かる好例です。ゲーム音楽における箏の可能性を知るうえでも注目したい作品でしょう。
琴(箏)が使われたゲーム音楽②『仁王2』
『仁王2』は戦国時代末期を舞台に、人間と妖怪が入り乱れる世界を描いたアクションRPGです。日本の歴史や妖怪などを題材としており、音楽にも作品の重厚な世界観が反映されています。
菅野祐悟と眞鍋昭大が音楽を担当
『仁王2』の音楽を担当したのは、菅野祐悟さんと眞鍋昭大さんです。2020年3月18日に発売されたオリジナル・サウンドトラックには全51曲が収録されています。
戦国時代を舞台としながら伝統的な和楽器だけで音楽を構成するのではなく、西洋楽器や現代的なサウンドも組み合わせています。和とダークファンタジーを融合した『仁王2』らしい音楽が特徴です。
眞鍋昭大が箏を演奏
『仁王2 オリジナル・サウンドトラック』の演奏クレジットでは、眞鍋昭大さんの担当楽器として「Koto」が記載されています。
作曲・編曲だけでなく実際に箏を演奏していることを確認できる点は興味深いところです。箏を単独で目立たせるのではなく、さまざまな楽器の中に取り入れることで作品独自の音楽を作っています。
和楽器と西洋楽器を組み合わせる
『仁王2』では箏だけでなく尺八などの和楽器と、西洋の弦楽器や管楽器なども使用されています。
伝統的な日本音楽を再現するのではなく、ゲームの戦闘や物語に合うように和楽器を活用している点が特徴です。箏の繊細な響きも戦国時代と妖怪が交差する独特な世界観を作る音色の一つとなっています。
日本的な音楽が魅力のゲーム③『大神』
『大神』は日本神話や昔話をモチーフとした世界を舞台にしたアクションアドベンチャーゲームです。水墨画を思わせる映像表現とともに日本らしさを感じさせる音楽も高い存在感を持っています。
日本神話の世界と調和する音楽
舞台となる「ナカツクニ」には日本の神話や昔話、自然、祭りなどを連想させる要素が数多く登場します。
音楽にも日本的な旋律や伝統音楽を思わせる表現が取り入れられ、自然豊かなフィールドや神聖な場所など、それぞれの場面の雰囲気を引き立てています。映像と音楽を一体として楽しみたい作品です。
サウンドトラックは全218曲
『大神 オリジナル・サウンドトラック』は2006年5月31日に発売され、CD5枚組・全218曲という非常に大規模な内容になっています。
作曲には上田雅美さん、山口裕史さん、近藤嶺さん、海田明里さんなどが参加しています。フィールド、戦闘、物語など数多くの場面を音楽で表現していることも『大神』の魅力です。
琴(箏)の響きが印象的なゲーム④『朧村正』
『朧村正』は江戸時代の日本を舞台とした和風アクションRPGです。浮世絵を思わせるグラフィックや妖怪、刀など、日本文化を強く感じさせる世界観が特徴となっています。
ベイシスケイプが音楽を制作
音楽制作は崎元仁さん率いるベイシスケイプ(Basiscape)が担当しました。作品の舞台に合わせ、日本の伝統音楽を意識したサウンドが取り入れられています。
単純に和楽器を使うだけではなく、ゲームの戦闘や物語に合わせた現代的な音楽へと発展させている点が特徴です。映像と音楽の両方から「和」を感じられる作品となっています。
「開巻劈頭」に注目
サウンドトラック冒頭に収録されている「開巻劈頭」は、『朧村正』を象徴する楽曲の一つです。
ゲーム音楽専門メディアの解説では作品を通して使用される重要な旋律が箏によって提示されると紹介されています。繊細な和の響きから音楽が展開していく構成にも注目して聴いてみるとよいでしょう。
伝統と現代的なゲーム音楽を融合
『朧村正』の魅力は伝統的な日本音楽をそのまま再現するのではなくゲームに適したサウンドとして再構築していることです。
静かな場面から激しい戦闘まで音楽の表情が変化し、日本的な音色がさまざまな形で登場します。箏をはじめとした和の響きが現代のゲーム音楽とどのように融合するのかを楽しめる作品です。
琴(箏)が楽しめるゲーム音楽を比較
ここまで紹介した作品は、同じ和風ゲーム音楽でも箏や和楽器の取り入れ方が異なります。特徴を簡単に比較すると次のようになります。
| 作品 | 箏・和楽器の特徴 | 音楽の印象 |
|---|---|---|
| 原神(稲妻) | 箏・三味線・尺八・太鼓とオーケストラを融合 | 壮大・幻想的・躍動的 |
| 仁王2 | 箏・尺八などと西洋楽器を組み合わせる | 重厚・緊張感・ダーク |
| 大神 | 日本の伝統音楽を思わせる音楽表現 | 幻想的・自然・神話的 |
| 朧村正 | 日本的な音色と現代的なゲーム音楽を融合 | 和風・華麗・躍動的 |
『原神』ではオーケストラとの融合、『仁王2』では戦国ダークファンタジー、『大神』では日本神話を思わせる世界、『朧村正』では江戸や妖怪の世界と、それぞれ異なる方法で日本的な音が使われています。
ゲーム音楽から琴(箏)に興味を持ったら
ゲーム音楽をきっかけに琴(箏)が気になったら、実際の箏曲や現代的な箏演奏も聴いてみると良いと思います。
伝統的な箏曲と聴き比べてみる
ゲーム音楽では箏をほかの楽器と組み合わせることが多いため、箏だけの演奏を聴くと楽器本来の音色がより分かりやすくなります。
伝統的な箏曲、現代曲、ゲーム音楽を聴き比べると、同じ箏でも演奏方法や楽曲によって印象が大きく変わることに気付くでしょう。
琴と箏の違いも知っておこう
一般には「琴」という言葉が広く使われていますが、日本でよく見かける13本の弦を持つ楽器は正確には「箏」です。
箏は「柱(じ)」を使って音程を調整するのに対し、本来の琴には柱がありません。ゲーム音楽から和楽器について調べる際にも、この違いを知っておくと理解しやすくなります。
ほかの和楽器にも注目してみよう
ゲーム音楽には、箏以外にも三味線、尺八、篠笛、和太鼓など多くの和楽器が登場します。
一つひとつの音を知っていくと「この音は三味線」「ここでは尺八が鳴っている」といった聴き方もできるようになります。ゲームを入口として和楽器全体へ興味を広げていくのもおすすめです。
まとめ|琴(箏)の音色からゲーム音楽を楽しもう
琴(箏)は日本らしい繊細な響きを持ちながら、静かな場面から激しい戦闘シーンまで幅広い表現ができる楽器です。
今回紹介した『原神』『仁王2』『大神』『朧村正』では、それぞれ異なる形で日本的な音楽表現を楽しめます。特に『原神』や『仁王2』では箏の演奏クレジットを確認でき、伝統楽器が現代のゲーム音楽へ取り入れられていることが分かります。
一方でゲームで聞こえる「琴のような音」が必ずしも生演奏の箏とは限りません。実際の楽器、サンプリング音源、シンセサイザーなど、ゲーム音楽ではさまざまな方法で音が作られています。
お気に入りのゲーム音楽が見つかったら、曲そのものだけでなく「どんな楽器が使われているのか」にも注目してみてください。
ゲームを入口として箏、三味線、尺八、和太鼓などへ興味を広げることで日本の伝統楽器をより身近に楽しめるようになるでしょう。


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